「お母さんありがとう」
真っ黒によごれた手に紫のカーネーションを娘から渡された。
夕食は夫の手ほどきでバーモントカレー(甘口)を作ってくれた。
じゃがいもとにんじんは自分でむいたと初めての料理制作に満足げだ。
上げ膳据え膳にホームドラマのような家族団らん。まさか自分にこんな日がくるとは・・・
妊婦だつた頃の私は酷暑と胎動の恐怖、10年以上飲んでいる抗うつ剤と眠剤を止められ
「薬、薬・・・」とつぶやきながら錯乱状態のなか24時間制作を続け100号を5枚は軽く仕上げた。
(けして人様に見せられるものではありませんが)
よく何事もなく生まれて来たものだと感心している。
精神的な苦痛から解放され出産の苦痛はむしろ快感さえ覚えた事を思い出す。
しかし問題は産後だった。
体調の変化か環境の問題か、今まで飲んでいた薬が効かない。あらゆる薬をためし
その副作用に悩まされ、酷い嘔吐と頭痛・ろれつが回らなくまっすぐ歩けない。
また、我が子をベランダから落としたくなる衝動とその遺体をビニール袋に処理している
幻覚に悩まされ、壁に額を何時間も打ち続け流血しその痛みで我に返るといった日が続いた。
そんな中、思いついたのが深夜のマラソン。
皆が眠りについた後、3〜4時間走り続けへとへとで布団に入る日を繰り返し
8か月後、22キロの減量と不眠を克服した。その後睡眠がとれるようになった為か精神面も回復した。
あれから4年。何度となく幼い娘に首をくくったり、流血したり、暴力など見せてしまったが
じつに素直に成長してくれた。逆に「ママお薬飲んだ?」などと気を使う事にも心が痛む。
何はともあれ、これからも 皆に助けられながら愚直に生きるしかないと思った母の日だった。